(株)知財コーポレーション
喜多教知
1. 市場調査の目的
この市場調査は、中国市場に関し、特定技術分野におけるブルー・オーシャン市場を見出すことにある。
ブルー・オーシャン市場とは、競争相手のいない未開拓市場のことで、文字通り「のどかで穏やかな青い海」のような市場を言う。
ブルー・オーシャン市場に基づく経営戦略は、欧州経営大学院のW・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏が2005年頃にビジネス書で提唱したものである。
ブルー・オーシャン戦略によると、血で血を洗うような競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海)」とし、そこから可能な限り脱却して、競争のない理想的な未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海)」を切り開くべきだと説いている。
すなわち、自社の現在の立ち位置又は将来の進むべき道がレッド・オーシャン市場なのか、又はブルー・オーシャン市場なのかを把握することは、自社の開発ロードマップや営業戦術の策定に重要な意義を有すると考える。
2. 調査対象の技術分野
今回の調査の対象は、光触媒に関する技術分野である。
光触媒とは、光を照射することにより触媒作用を示す物質の総称である。
現在、光触媒は、医療、住宅、水・土浄化、家電、自動車、空気浄化、農業、印刷、道路・トンネルなど、種々の分野で用いられている。
このような光触媒は、地球環境に配慮したエコマテリアルの一つとして考えられている。
3. 調査対象の母集団
中国市場のブルー・オーシャン市場を発掘するために、本調査では中国の特許情報を用いる。
中国の特許情報をAI解析することにより、ブルー・オーシャン市場の所在の見える化をする。
4. アプリケーションの占有割合
解析チャート1は、中国市場における光触媒の特許情報に関し、光触媒の適用分野(以下、アプリケーションと適宜に称する)の占有割合を示している。
例えば、医療や、水・土浄化というアプリケーションは、それぞれが大きな占有割合を有することから、それらに対して寄せられている期待が大きいと言える。
例えばまた、光触媒のアプリケーションは種々の分野にわたっていることがわかる。
5. アプリケーションの年次変化
解析チャート2は、光触媒のアプリケーションに関し、特許出願の数の経年変化を示している。
例えば、医療や、水・土浄化というアプリケーションは、その特許出願の数が近年において増加傾向にある。この点から、医療や、水・土浄化の分野に光触媒を適用することは、近年及び将来にわたって期待を寄せられていることがわかる。
例えばまた、アプリケーション全体的に、その特許出願の数が近年において増加傾向にあることから、いずれの分野においても光触媒それ自体に期待を寄せられていることがわかる。
6. アプリケーションの年次変化②
解析チャート3は、前ページの解析チャートを三次元に現わしたものである。
赤系色は特許出願数が相対的に多いことを示し、青系色は特許出願数が相対的に少ないことを示している。
7. ブルー・オーシャン市場の発掘
解析チャート4は、ブルー・オーシャンを発掘するものである。
解析チャートの横軸は、特許出願数つまり競争の激しさを示している。
縦軸は、特許スコア平均値つまり、特許の活性度を示している。
なお、特許スコアとは、審判系手続きの数や年金納付年数を数値化したものである。
審判系手続きが多いということは、特許出願人が是が非でも特許権を取得したいという意味や、他社が是が非でも特許権を消滅させたいという意味と解することができる。
年金納付年数は、その年数が多いほど、特許出願人がその特許権に価値を見い出していると解することができる。
解析チャートの見解は次ページで述べる。
8. 調査の総括
解析チャート4に示した通り、光触媒の中国におけるブルー・オーシャン市場は、自動車に対するアプリケーションであることがわかる。
すなわち、自動車に対する光触媒の適用は、競争相手のいない未開拓市場、つまり文字通り「のどかで穏やかな青い海」と解することができる。
一方、医療や、水・土浄化に対する光触媒の適用は、解析チャート1~3に示した通り、現在及び将来にわたって大きな期待を寄せられているものの、血で血を洗うような競争の激しいレッド・オーシャン市場に近いイエロー・オーシャン市場となっている。
つまり、医療、水・土浄化に対する光触媒は、その研究開発にヒト・モノ・カネを投入したとしても、そのリターンが期待できないおそれがある。
光触媒に関する会社の経営者、研究開発者は、中国に事業を展開するに際し、このような点を考慮しつつ、自社の開発ロードマップや営業戦術を策定すべきである。
9. 最後に
本調査は、特許情報に基づいた市場調査を試みたものである。
一般的な市場調査は、数十万円~数百万円の費用を要する場合が比較的多い。
本調査の手法によれば、数万円からの調査が可能になり、必要なときに迅速に調査をすることができるようになると考える。
会社の経営者、開発者の一助になれば幸いである。
株式会社知財コーポレーション
喜多 教知 (kita@chizai.jp)
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