(株)知財コーポレーション
喜多教知
1. 目的
本特許解析の目的は、経営者、開発者、ベンチャーキャピタル、投資家のために、最新テクノロジーに関する技術優位性を有する会社を抽出することにある。
従前の解析は、法律や言語が国ごとに異なることから、国ごとになされるのが一般的であった。
しかし、技術それ自体には国境はなく、複数国に跨った相対評価が望まれていた。
そこで、本特許解析は、日本/米国/欧州/中国/韓国/国際事務局(IB)に跨って横断的に相対比較をすることにより、最新テクノロジーに関し、世界的な技術優位性を有する会社を見出すことを目的にする。
2. 解析対象の技術
本特許解析では、XR画像処理に関する特許を解析対象とする。
XR画像処理とは、「VR」「AR」「MR」といった画像処理技術の総称である。
VR(Virtual Reality)は、仮想現実と呼ばれる技術で、コンピューターグラフィックスなどによって仮想世界を作り出すものである。利用者は、ヘッドマウントディスプレイや専用ゴーグルなどを装着し、そこに映し出された映像を見るだけでなく自在に動き回り、まるで自分が仮想空間内にいるような没入感を体験できる。
AR(Augmented Reality)は、現実世界の情報にコンピュータで作り上げた画像や情報を重ね合わせるものであり、拡張現実とも称される。
MR(Mixed Reality)は、現実の世界にデジタル映像があたかも存在するかのように投影するものであり、複合現実とも称される。
本特許解析では、XR画像処理に関する特許を解析対象とする。
3. 解析対象の母集団
表1は、解析対象の母集団を決定するための検索式を示している。
表1に示す通り、2008年1月1日~2017年12月31日という期間における日本/米国/欧州/中国/韓国/国際事務局(IB)の仮想現実画像に関する特許出願を解析対象とした。
解析対象の母集団は、6,727件である。
4. 特許出願国
解析チャート1は、国単位の特許出願数を示している。
解析チャート1によれば、仮想現実画像に関する特許は、中国(CN)と米国(US)の2国で全体の80%弱を占めていることがわかる。
5. 特許出願年
解析チャート2は、国単位の特許出願年における特許出願数の推移を示している。
解析チャート2によれば、近年において各国の特許出願が増えていることがわかる。
特に、中国の特許出願が急増していることがわかる。
6. 量的特許価値
解析チャート3は、自社が保有する特許価値の累計に関し、上位10社を示している。
ここでの累計値を量的特許価値と称する。なお、特許価値は、技術優位性を示す指標であり、以下のパラメータに基づいて算出されたものである。
・実施許諾及びそれに類似する取引情報 (INPADOC)
・年金支払年数 (INPADOC)
・権利付与(INPADOC)
・請求項数 (付与)
・優先権主張数
・PCT出願
・パテントファミリー出願国数
【解析チャート3】
7. 質的特許価値
解析チャート4は、自社の特許出願1件あたりの特許価値の平均を示している。ここでの特許価値の平均値を質的特許価値と称する。
解析チャート4に示す通り、解析チャート3に示す順位とは異なることがわかる。
すなわち、解析チャート4に示す上位の企業は、特許の数よりもその質を重視していると言える。
8. 上位10社の強み・弱み
解析チャート5は、大きな特許価値を有する上位10社に関し、各社の技術的な強み・弱みを示している。
解析チャート5に示すように、注力している技術分野が会社ごとに異なることがわかる。
例えば、MAGIC LEAP社は、光学系(G02B)に強みを有していることがわかる。
例えばまた、SAMSUNG社は、無線通信ネットワーク(H04W)に強みを有していることがわかる。
9. 世界特許No.1
JP/US/CN/KR/WOにおいて最も特許価値を有する特許は、QUALCOMM社(米国)の「Anchoring virtual images to real world surfaces in augmented reality systems」である。
【特許番号】 US9384594 - 09384594 (2016-07-05)
【権利者履歴】 QUALCOMM INCORPORATED, CALIFORNIA (2012-03-30)
【名称】 Anchoring virtual images to real world surfaces in augmented reality systems
【要約】 A head mounted device provides an immersive virtual or augmented reality experience for viewing data and enabling collaboration among multiple users. Rendering images in a virtual or augmented reality system may include capturing an image and spatial data with a body mounted camera and sensor array, receiving an input indicating a first anchor surface, calculating parameters with respect to the body mounted camera and displaying a virtual object such that the virtual object appears anchored to the selected first anchor surface.
【代表図】
10. 最終分析
解析チャート6は、各社が保有する特許の量的特許価値と質的特許価値を同時に示したものである。
解析チャート6に示す通り、量的特許価値が小さい会社であっても、大きな質的特許価値を有する会社が存在することがわかる。
11. 総括
本特許解析によれば、仮想現実画像に係る特許に関し、日本/米国/欧州/中国/韓国/国際事務局(IB)を横断した技術競争優位性を有する企業として、MAGIC LEAP社(米国)、SAMSUNG社(韓国)、MICROSOFT社(米国)、QUALCOMM社(米国)、LG社(韓国)などが挙げられる。
すなわち、仮想現実画像の市場における企業間競争は、当面は激しい状況が続くと予想される。
この点には、経営者、開発者、ベンチャーキャピタル、投資家が着目すべき点と思料する。
株式会社知財コーポレーション
調査・情報提供グループ
喜多 教知 (kita@chizai.jp)
■データベース提供者:Patentfield株式会社 (https://www.patentfield.com/)