(株)知財コーポレーション
喜多教知 

1. 目的

SNSアプリSNSアプリ 本技術解析の目的は、経営者、開発者、ベンチャーキャピタル、投資家のために、最新テクノロジーに関する技術優位性を有する会社を抽出することにある。
 従前の解析は、法律や言語が国ごとに異なることから、国ごとになされるのが一般的であった。
 しかし、技術それ自体には国境はなく、複数国に跨った相対評価が望まれていた。
 そこで、本技術解析は、日本/米国/欧州/中国/韓国に跨って横断的に相対比較をすることにより、最新テクノロジーに関し、世界的な技術優位性を有する会社を見出すことを目的にする。

2. 解析対象の技術

 本技術解析では、SNSに関する技術を解析対象とする。
 SNSとは、Web上で社会的ネットワーク(ソーシャル・ネットワーク)を構築可能にするサービスである。
 SNSの主目的は、個人間のコミュニケーションにある。利用者はサービスに会員登録をすることで利用できるが密接な人の繋がりを重視して、既存の参加者からの招待がないと参加できないシステムになっているものも存在する。
 近年では、各国の企業や政府機関など多々な分野においてSNSの利用が進んでいる。
 本技術解析では、このようなSNSに関する技術を解析対象とする。

3. 解析対象の母集団

 表1は、解析対象の母集団を決定するための検索式を示している。
 表1に示す通り、2008年1月1日~2017年12月31日という期間における日本/米国/欧州/中国/韓国のSNSに関する特許出願を解析対象とした。
 解析対象の母集団は、23,059件である。

 【表1】
検索式

4. 特許出願国

 解析チャート1は、国単位の特許出願数を示している。
 解析チャート1によれば、SNSに関する特許出願は、米国において比較的多くなされている。
 ただし、中国/韓国/日本の出願数も参照すると、各国においてSNSは期待されていることがわかる。

【解析チャート1】
特許出願国

5. 特許出願年

 解析チャート2は、国単位の特許出願年における特許出願数の推移を示している。
 解析チャート2によれば、各国の近年における特許出願数が減少傾向にあることがわかる。
 この点は、2013年頃にSNSブームが到来し、それが落ち着きつつあるにすぎず、近年の出願数それ自体を参照すると、SNS関連の特許出願は依然として多いと見受けられる。

【解析チャート2】
特許出願年

6. 量的特許価値

 解析チャート3は、自社が保有する特許価値の累計に関し、上位10社を示している。ここでの累計値を量的特許価値と称する。なお、特許価値は、技術優位性を示す指標であり、以下のパラメータに基づいて算出されたものである。

・被引用件数 (DOCDB)
・引用件数 (DOCDB)
・実施許諾及びそれに類似する取引情報 (INPADOC)
・年金支払年数 (INPADOC)
・請求項数 (付与)
・優先権主張数
・PCT出願
・出願経過日数
・原出願数(分割・継続出願等)
・パテントファミリー出願国数
【解析チャート3】
量的特許価値

7. 質的特許価値

 解析チャート4は、自社の特許出願1件あたりの特許価値の平均を示している。ここでの特許価値の平均値を質的特許価値と称する。
 解析チャート4に示す通り、解析チャート3に示す順位とは異なることがわかる。
 すなわち、解析チャート4に示す上位の企業は、特許の数よりもその質を重視していると言える。

【解析チャート4】
質的特許価値

8. 上位10社の強み・弱み

 解析チャート5は、大きな特許価値を有する上位10社に関し、各社の技術的な強み・弱みを示している。
 解析チャート5に示すように、注力している技術分野が会社ごとに異なることがわかる。
 本解析においては、FACEBOOK社が全体的に他社よりも技術的に強いことがわかる。
 特に、FACEBOOK社は、G06Q分類に強いこと、つまりSNSを用いたビジネスモデル特許に強いことがわかる。

【解析チャート5】
技術的な強み・弱み

9. 世界特許No.1

 JP/US/CN/KRにおいて最も特許価値を有する特許は、FACEBOOK社(米国)の「Providing personalized platform application content」」である。
 本特許は、その引用件数が22件と比較的多いことから、他社の実施品と比較的近い関係にあると言える。また、その被引用件数が74件と比較的多いことから、他社の特許出願の権利化を比較的多く阻止してきたと言える。

【出願番号】 US13821208A - 12138212 (2008-06-12)
【特許番号】 US8694577 - 08694577 (2014-04-08)
【権利者履歴】
FACEBOOK, INC., CALIFORNIA (2008-11-19)

【名称】Providing personalized platform application content
【要約】 A social networking website maintains a profile for each user of the website. The profile includes data associated with a user, such as a connection to one or more plurality of other users of the social networking website or user preferences. The social networking website communicates with one or more third-party application servers to provide one or more applications to social networking website users.
【代表図】
FACEBOOKの特許

10. 最終分析

 解析チャート6は、各社が保有する特許の量的特許価値と質的特許価値を同時に示したものである。
 解析チャート6に示す通り、量的特許価値の総計が小さい会社であっても、大きな質的特許価値を有する会社が存在することがわかる。

【解析チャート6】
特許価値

11. 総括

 本技術解析によれば、SNSの技術に関し、日本/米国/欧州/中国/韓国を横断した技術競争優位性を有する企業は、FACEBOOK社(米国)の1強であることがわかる。
 ここで着目すべきは、量的特許価値はFACEBOOK社に大きく劣るものの、質的特許価値がFACEBOOK社と同等のものを有する会社が存在する点である。SALESFORCE社(米国)、MICROSOFT社(米国)、GOOGLE社(米国)である。
 これら質的特許価値の大きな企業は、SNSの技術開発力に優れているという見方ができることから、今後の更なる躍進に期待できる。
 この点は、経営者、開発者、ベンチャーキャピタル、投資家が着目すべき価値があるものと思料する。

本解析の問い合わせ先

株式会社知財コーポレーション
調査・情報提供グループ
喜多 教知 (kita@chizai.jp)

■解析者:株式会社知財コーポレーション (https://www.chizai.jp/)
■データベース提供者:Patentfield株式会社 (https://www.patentfield.com/)