(株)知財コーポレーション
喜多教知 

1. 目的

AI特許検索AI特許検索 本技術解析の目的は、経営者、開発者、ベンチャーキャピタル、投資家のために、最新テクノロジーに関する技術優位性を有する会社を抽出することにある。
 従前の解析は、法律や言語が国ごとに異なることから、国ごとになされるのが一般的であった。
 しかし、技術それ自体には国境はなく、複数国に跨った相対評価が望まれていた。
 そこで、本技術解析は、日本/米国/欧州/中国/韓国に跨って横断的に相対比較をすることにより、最新テクノロジーに関し、世界的な技術優位性を有する会社を見出すことを目的にする。

2. 解析対象の技術

 本技術解析では、AI特許検索に関する技術を解析対象とする。
 AI特許検索とは、膨大な特許公報から所望の公報群を検索、抽出、解析、分析をするに際し、ディープラーニング等を有する人工知能(AI)を適用することにより、より精度の良い且つより使い勝手の良いシステムを実現するものである。
 近年のAIアルゴリズムの発展により、特許検索の更なる発展が期待されている。
 本技術解析では、AI翻訳に関する技術を解析対象とする。

3. 解析対象の母集団

 表1は、解析対象の母集団を決定するための検索式を示している。
 表1に示す通り、2008年1月1日~2017年12月31日という期間における日本/米国/欧州/中国/韓国のAI特許検索に関する特許出願を解析対象とした。
 解析対象の母集団は、1,017件である。

 【表1】

4. 特許出願国

 解析チャート1は、国単位の特許出願数を示している。
 解析チャート1によれば、AI特許検索に関する特許出願は、中国が全体の5割以上を占めていることがわかる。
 中国は、AI大国として、AIを種々のシステムに適用させる技術が進んでいるという点だけでなく、特許検索に関する特許出願が多いということは、産業の発展に特許法を尊重しようという意思を把握することができる。

【解析チャート1】

5. 特許出願年

 解析チャート2は、国単位の特許出願年における特許出願数の推移を示している。
 解析チャート2によれば、近年において、他国の特許出願数と比べると、中国の特許出願が急増していることがわかる。
 中国市場におけるAI特許検索技術に対する期待度の大きさを推定できる。

【解析チャート2】

6. 量的特許価値

 解析チャート3は、自社が保有する特許価値の累計に関し、上位10社を示している。ここでの累計値を量的特許価値と称する。なお、特許価値は、技術優位性を示す指標であり、以下のパラメータに基づいて算出されたものである。

・被引用件数 (DOCDB)
・引用件数 (DOCDB)
・実施許諾及びそれに類似する取引情報 (INPADOC)
・年金支払年数 (INPADOC)
・請求項数 (付与)
・優先権主張数
・PCT出願
・出願経過日数
・原出願数(分割・継続出願等)
・パテントファミリー出願国数
【解析チャート3】

7. 質的特許価値

 解析チャート4は、自社の特許出願1件あたりの特許価値の平均を示している。ここでの特許価値の平均値を質的特許価値と称する。
 解析チャート4に示す通り、解析チャート3に示す順位とは異なることがわかる。
 すなわち、解析チャート4に示す上位の企業は、特許の数よりもその質を重視していると言える。

【解析チャート4】

8. 上位10社の強み・弱み

 解析チャート5は、大きな特許価値を有する上位10社に関し、各社の技術的な強み・弱みを示している。
 解析チャート5に示すように、注力している技術分野が会社ごとに異なることがわかる。
 例えば、ALIBABA社はデータ処理(G06F)に強みを有する一方、BLACK HILLS社はビジネスモデル特許等(G06Q)に強みを有する点を把握できる。

【解析チャート5】

9. 世界特許No.1

 JP/US/CN/KRにおいて最も特許価値を有する特許は、SCHWEGMAN LUNDBERG & WOESSNER(米国知的財産法律事務所)の「Patent mapping」である。
 この特許は、引用件数が55件と比較的大きいことから、競合他社の実施品と近い関係にある特許と言える。

【出願番号】 US201213365062A - 13365062 (2012-02-02)
【特許番号】 US9201956 - 09201956 (2015-12-01)
【権利者履歴】
SCHWEGMAN LUNDBERG & WOESSNER, P.A., MINNESOTA (2015-11-23)

【名称】 Patent mapping
【要約】 The present subject matter provides systems, methods, software, and data structures for patent mapping, storage, and searching. Some such embodiments include mapping patent documents, claims, and claim limitations. Some further embodiments provide for searching a universe of patent documents by patent document, claim, limitation, class, element, or concept.
【代表図】

10. 最終分析

 解析チャート6は、各社が保有する特許の量的特許価値と質的特許価値を同時に示したものである。
 解析チャート6に示す通り、量的特許価値が小さい会社であっても、大きな質的特許価値を有する会社が存在することがわかる。

【解析チャート6】

11. 総括

 本技術解析によれば、AI特許検索の技術に関し、日本/米国/欧州/中国/韓国を横断した技術競争優位性を最も有する企業は、ALIBABA社(中国)と言える。
 しかしながら、ALIBABA社の質的特許価値を参照すると、他社と比べて特段に大きいとは言えない。
 質的特許価値の比較的大きな企業は、SCHWEGMAN LUNDBERG & WOESSNER(米国知的財産法律事務所)、BLACK HILLS社(米国)が代表的である。
 すなわち、AI特許検索の技術競争優位性を有する企業に関しては、現在のところ群雄割拠の状況と見受けられる。この点、経営者、開発者、ベンチャーキャピタル、投資家が着目すべき点と思料する。

本解析の問い合わせ先

株式会社知財コーポレーション
調査・情報提供グループ
喜多 教知 (kita@chizai.jp)

■解析者:株式会社知財コーポレーション (https://www.chizai.jp/)
■データベース提供者:Patentfield株式会社 (https://www.patentfield.com/)